トムス・キャビンのファンのみなさまへ

僕はトムス・キャビンで自分が聴きたいアーティストだけを日本に 呼んできた。30年以上。

音楽業界の風潮や流行なんか関係なかった。とにかく自分が聴きたいもの、またこの目で観てこれは!というものを呼んできた。
音楽ジャンルには節操が無いので、デイヴィッド・グリスマンのドウグ・ミュージックから始まって、エリック・アンダースン、トム・ウエイツ、ガイ・クラークといったSSW達。ニュー・グラス・リヴァイバルからビル・モンローといったブルーグラス。オーティス・クレイ、ジェームス・カーのサザンソウル。グラハム・パーカー、エルヴィス・コステロ、XTC、トーキング・ヘッズ、B-52s、ラモーンズと行ったパンク、ニューウエーブのバンド。ティト・プエンテのサルサ。ラウンジ・リザーズやメデスキ、マーチン&ウッドのニューヨーク・アンダーグラウンド派。変わった所ではイギリスのウクレレ・オーケストラ、レジデンツ、ローリー・アンダーソンにも関わった。こうやって書いてみると、興行というよりは、トムスという場を借りて、単純に自分が観るために、好きなアーティストを日本に呼んでいたと、あらためて気づかされた。

今年の1月、僕が凄く惚れ込んで日本に来てもらったチップ・テーラーのチケットが予想以上に売れなくて、素晴らしい演奏だっただけにチップに対して申し訳ない、という気持ちでいっぱいになった。もう十分やりたい放題やってきたし、自分が聴きたいものを皆さんに押し付けるのは、これで最後にしようと反省し、トムスも辞めようかと思って、ちらっと泣き言をmixiに書いたら、もっと頑張れと言う激励やおしかりのメールや電話を頂いた。

そんな中、その重い気分で新しいCDを買ったり、パソコンで新しいグループの音を聴いたりしていたら、またまたこれも生で聴きたいなぁ、これも日本で観てみたいなぁ...こんな音楽があるんだ!、こんな若いミュージシャンがこんなことをやっていて、日本じゃまだちゃんと紹介されていないらしいといった事が頭の中を回り始めてしまった.....そこへ以前トムスで仕事をしてくれていた石坂から電話があった。

石坂はトムス・キャビンで音楽業界に入った、僕のDNAを受け継いでいる男でちょうど今フリーになったので、一緒にトムス続けましょうよと言ってくれた。彼はジェシー・ハリスやジョー・ヘンリーなどトムスのかんじに近いものを呼んでいる。

僕が好きな音楽も、どうも好きなようだし、後進を育てる、とまでは言わないがこいつと一緒にもうしばらくはやっていけそうな気がして二人でもう一度トムスをやってみることにした。僕が引退した後も石坂がトムス・キャビンを引き継いでやってくれると安心だし...やっぱり日本の海外アーティストの歴史からトムスキャビンの名前が消えてしまうののは、さみしい気もするし、若い血を入れてもう一踏ん張りします。

僕が「聴かずに死ねるか!」って思っているアーティストをこれからのプランにもう一度入れて、石坂の意見やアイディアを入れてみて...

採算も検討して...
ちょっと若返った新生トムスとして再出発しようと決めたので、みなさんもう少しお付き合いください。

という事で石坂とやる新生トムスキャビンの第一弾はこれぞ聴かずに死ねるか!ランブリン・ジャック・エリオットだ。


トムス・キャビン代表

2011年2月22日
麻田浩


「ランブリン・ジャック・エリオット来日ツアー2011」